飛べない黒猫

事務所を出て、エレベーター前の廊下で立ち止まる。
青田と岡田はバッタリ鉢合わせとなった。


「あぁ、岡田くん…昼ですか?
どう?一緒に。」


青田の言葉にすぐさま岡田が答えた。


「えぇ、お供します。」


2人は並んでエレベーターに乗り込んだ。


「経理課の女の子達が、週刊誌見て騒いでましたよ。
珍しいですね、社長が取材に応じるなんて…」


青田はチラッと岡田の顔を見て、また直ぐに視線を戻す。
2人はエレベーターの扉を眺めたまま話を続けた。


「いや、取材受けるつもりは無かったんだが。
洋子と蓮に関しての記事をネタに突つかれてね…
変に騒ぎ立てられるのも煩わしいから、受けたまでだよ。
どうやら…私たち一家を陥れようとしているヤカラがいるらしいのだよ。」


「おや、物騒な話ですね…」


岡田の声が、かすかに裏返った。


「まぁ、別に、彼女らが悪い訳じゃないので、そんなモンほっといても良かったのだが…
情報の出どころが気になってね。
監視カメラに顔は写したし、週刊誌の編集部に知人もいる。
少し探ってみようと思って取材を受けました。」


青田は温厚な人柄であるが、恐ろしく頭はキレる。

岡田は、記者が余計な事を口走ったのではないのかとドキリとした。


「何かわかったのですか?」


1階フロアに着き、扉が開く。


「いや…特に。」


青田は歩きながら話を続ける。


「昼は何がいいですか?
蕎麦にしましょうか。
あぁ、そう言えば昨日、千代ちゃんの店に行ってきました。
君も最近、行ったんですね…
会うたび痩せていくって、千代ちゃん心配してましたよ。」