飛べない黒猫

幼い頃から心の何処かに引っかかっていたチクリと痛い小さなトゲが、取り除かれたような感じがした。

魚の小骨がのどに引っかかっている時のように、違和感と小さな痛みが、つねにストレスになっていたのだ。

その小骨が取れて、何を飲み込んでも痛みを感じない、スッキリした気分になった。


「もう…メールじゃなくても、ちゃんと伝えられる…ね。」


真央は車の揺れに身を任せ、くたりとシートに身を沈めてつぶやいた。


「ん…、文字も良いけど、顔をつき合わせ目を見て話せば、もっと深く伝える事が出来るよね。
真央は今まで、自分の気持ち伝えきれずに、もどかしい思いしてたんじゃない?」


「うん、してた。
でもね、あきらめてた。
ま、いっか…って。
だけど、伝わらないと…寂しくなるの、あとから…」


「そうだね…」


蓮もそうだった。

真央のように話せない訳ではない。
伝える手段はあるのに伝える気力が無かった。

どうせ伝わらない…そんなあきらめが、蓮を無気力にしたのだった。

そして、あとから後悔する。



そうか…
寂しかったんだ、俺も…。


真央は、わかっていたんだ。
だから昨夜、かたときも俺から離れずにいたのか。



「真央…
昨日ずっと、そばにいてくれたよね。
どうして?」


蓮のささやきは、真央には聞こえていない。

真央は目を閉じ首を少し傾げて、静かに寝息をたてていた。