飛べない黒猫

部屋に灯りがついていた。

窓の下に行って、手を伸ばしコンコンとガラスを叩く。
今まで何度か、こうやってお互いの部屋を行き来していた。


人影が浮かび、彼が窓を開けた。


「洋子ちゃん…
どうしたの?」


…えっ?
洋子の目に映ったのは、信じられないほど冷ややかな彼の顔だった。


「あ…あのね、話したい事があって…」


「…知ってるよ。
強姦されてたんだってね。
おまけに、犯人の子を妊娠しているんだって?」


低い声。
絞り出すように吐き捨てるように言う。


「言えなかったの…ごめんなさい…。
妊娠してるって気がついて、言わなきゃって思うんだけど怖くて…言い出せなかった。」


「俺…まんまと騙されてた訳だ…」


「そんなっ!
騙すなんて…
話したら、全て駄目になってしまいそうで…怖かったの。」


「…バレなきゃいいって思ってたの?
俺の気持ちなんて、どうでもいいんだ…」


「ちがう!そんなんじゃ…」


洋子の目から涙が溢れる。


「子供…どうすんのさ。」


「だって…あなたの赤ちゃんかもしれないし…」


「…はぁ?
そんなの、あるわけないし。」


穢れたものでも見るような、冷たい目で洋子をチラリと見る。

そして、そっぽを向いて押し黙った。