しかし、不思議だ。こんなこと彼に聞かれたのは初めてであった。いや、まあ、初めてというわけではないけれど。彼と迎える最初の誕生日は聞かれた。しかし、それからは聞かれていない。いつも、事前に準備していてくれた。洋物の菓子であったり、和物の菓子であったり。今思えば、彼から貰う贈り物は、ほとんどが菓子であった。彼は時折、ふとしたなにもないときにも贈り物をくれる。それも、やはり菓子。時折、櫛であったり髪飾りであったりもしたけれど、やはり菓子であることが多い。
別に不満はない。彼からの贈り物はどれも目を引くものだし、とても満足できた。
だから、彼からのものならきっと不満なんてないだろうと思う。それなのに、今更なにが欲しいかと聞かれるのは違和感があった。
彼が奏の誕生日を忘れていたわけないだろう。彼は真面目な人間な上に、記憶力は常人よりよかった。奏が物忘れが激しいと思ってしまうくらいに。
「あなたが、用意していないなんて、珍しいわね」
さっきの混乱のせいで頭が回らない。故に、考えたことがすぐに口から出てしまう。
「いや、その…」
彼には珍しい歯切れの悪い反応。何事かと、彼を振り返る。今まで視線をそらしていたことを再確認して、少しばつが悪い。
桜田は困ったような顔をして、バイオリンを見つめていた。バイオリンがどうしたのだろうか?
「用意はしていたのだが…」
歯切れが悪いな。用意していたならいいのに。それをくれればいいのに、どうしてそれを出さないのだろう?しかも、他のものを贈ろうとしている。そんなに用意したものがおかしなものだったのだろうか。菓子なら、潰れてだめになってしまったとか?落としてしまったとかだろうか。そうだとしても、なにを用意していたのか知りたい。そして、なぜだめになってしまったのかも知りたい。
「それなら、それを頂戴」
意地悪く笑う。彼に困らせられることはあっても、彼が困ることは滅多にない。そういうときは仕返しとばかりに意地悪をしなくては。奏はわくわくしていた。
常に無表情というか、締まりがないくて考えが現れない彼の顔は、これでもかというばかりに困っていた。唇をきつく結んで、眉を寄せていた。今に冷や汗まで流れてくるぞ。そんな顔をしていた。珍しくてもっと奏ではわくわくした。
別に不満はない。彼からの贈り物はどれも目を引くものだし、とても満足できた。
だから、彼からのものならきっと不満なんてないだろうと思う。それなのに、今更なにが欲しいかと聞かれるのは違和感があった。
彼が奏の誕生日を忘れていたわけないだろう。彼は真面目な人間な上に、記憶力は常人よりよかった。奏が物忘れが激しいと思ってしまうくらいに。
「あなたが、用意していないなんて、珍しいわね」
さっきの混乱のせいで頭が回らない。故に、考えたことがすぐに口から出てしまう。
「いや、その…」
彼には珍しい歯切れの悪い反応。何事かと、彼を振り返る。今まで視線をそらしていたことを再確認して、少しばつが悪い。
桜田は困ったような顔をして、バイオリンを見つめていた。バイオリンがどうしたのだろうか?
「用意はしていたのだが…」
歯切れが悪いな。用意していたならいいのに。それをくれればいいのに、どうしてそれを出さないのだろう?しかも、他のものを贈ろうとしている。そんなに用意したものがおかしなものだったのだろうか。菓子なら、潰れてだめになってしまったとか?落としてしまったとかだろうか。そうだとしても、なにを用意していたのか知りたい。そして、なぜだめになってしまったのかも知りたい。
「それなら、それを頂戴」
意地悪く笑う。彼に困らせられることはあっても、彼が困ることは滅多にない。そういうときは仕返しとばかりに意地悪をしなくては。奏はわくわくしていた。
常に無表情というか、締まりがないくて考えが現れない彼の顔は、これでもかというばかりに困っていた。唇をきつく結んで、眉を寄せていた。今に冷や汗まで流れてくるぞ。そんな顔をしていた。珍しくてもっと奏ではわくわくした。

