廊下はフローリング敷きで、つい

最近張り替えしたようだった。

佳奈美、挨拶するわよ。母親は私

にそう言うと、親戚一同が集まる

控室へ入った。

十畳程ある控室は静かだった。談

笑するはずもなく、かといってさ

めざめとすすり泣く声もない。取

り乱した人もなく、皆至って平静

を保っていた。

「あら葉子さん、お久しぶりね」

ストーブの前で暖をとっていた女

性が、私たちに気付くと、こう声

を掛けてきた。一面に座っていた

他の人たちも、皆一斉に頭を下げ

てきた。

「この度は本当に…何と言ってよ

いやら……」母はその人とお辞儀

を返すがえす交わしながら、しん

みりした声で言った。

「もうほんとにねぇ…まさか末っ

子のあの子が逝くとはねぇ……」

「佳奈美、おばあちゃんのお姉さ

ま。多恵子さんよ」

母は私に耳打ちした。私はうやう

やしくお辞儀した。