海までの距離

ぐるりと1周歩ききって、校門前まで戻る。


「他に行きたいところはあるかな?」

「十分です。本当に、十分参考になりました」


深々と頭を下げる私に、ライさんは「いえいえ」と柔和に答える。
ステージではあんなにもガツガツした骨太なギターを弾くのに、今目の前にいるライさんは紳士的すぎるほど紳士的。
とても私と1歳しか変わらないとは思えない。
うちのクラスの男子達も、大学生になればライさんの半分くらいは大人っぽくなるのかな。
…無理だろうなあ。


「海影君、2時間後にはこっちの方来られるって」


そう聞いて、私は時計に目をやる。
2時間後ということは、16時か。
海影さん、本当に私の為に時間作ってくれたんだ…。


「それまでどっか入ってよう。昼、食った?」

「や、まだです」

「腹減っただろ。何が食べたい?奢るよ」

「そんな!」


ぶんぶんと首を横に振る私を見て、ライさんは目を細めて笑った。


「後輩は、素直に『ご馳走様です』って言って先輩に甘えりゃいいの」