海までの距離

全身を撫で走る生温い夏風さえも、高揚した気持ちの今は嬉しい。






自転車はライブハウス近くのコンビニの前に停める。
高校からライブハウスが近いってお得だよね。放課後、掃除してからでも十分開場までに間に合うもん。
そんなナイス立地条件に魅かれて、私はこの高校を志望した。
中学の時はライブなんて行けなかったから（親が禁止してたから）、高校生になったら絶対沢山ライブ行ってやろうって強く誓っていた。
新潟県でトップクラスの進学校ということもあり、受験は大変だったなあ。
小学生の時からお母さんが煩く「勉強しろ」って言って厳しくしてくれたお陰で、今の私がいるのかも。
口煩いお母さんだけど、こういう点ではしみじみ感謝。
「進学校だから」ではなく、「ライブに行きやすい学校だから」という理由でうちの高校選んだのなんて、私くらいのもんじゃないかな…。
ライブハウスは雑居ビルの４階。エレベーターで４階まで上がる。


「あ！真耶ちゃんが来た！」


エレベーターが開くと、フロアの角に円陣を組んで座っていたグループの１人が、すぐに私の存在に気付いた。


「有磨（ありま）さん！レナさぁん！」