「夢が…無いんです。だけど、東京に行けば何かがある気がする。何をしたいのか分からない、けど。ただ今は、我武者羅に勉強するしか思いつかないんです…」
私は勇気を出して、口を開いた。
自分の言っていることは、海影さんの話に比べてとても情けなくてみっともない。
海影さんにそんな話をするのは恐れ多かった。
それでも、海影さんの話を聞いて、私も自分の気持ちを打ち明けたかった。
「成る程」
海影さんが相槌を打つ。
「今はそれで十分じゃないのかな。確固たる夢を持ってる受験生って、稀有な気もする。大学ってさ、夢を探す為の準備期間なのかもね。“何となく受験生やってます”ってのは、何も変なことじゃない」
きっと頭がいいのだろう、海影さんの話は筋が通っていて聞きやすい。
海影さんが羨ましくなった。
早くにやりたいことが見つかって、夢を追いかけている。
新潟を出て東京に行ったのも、確かな夢を抱いていたから。
私は…曖昧だ。


