海までの距離




「ご無沙汰しています、海影さん」


にっこり微笑む有磨さんは、いつもに増して大人びた姿。
一気にどっと押し寄せた緊張と歓喜と戸惑いその他の感覚に今にも押し潰されそうな私は、ただただ有磨さんの側にぴったりとくっついていることしかできない。






有磨さんの左隣に海影が座り、有磨さんの右隣に私が座る。
その私の隣にはミチ。


「この子女子高生なの!?」

「そうなんです。なので、お酒飲ませないで下さいね」


メンバーと有磨さんがそんなやりとりをして、私は2杯目以降もジンジャーエール。
アルコールはまるっきり飲めないという海影は、オレンジジュース。
海影以外の3人とスタッフさんとローディのお兄さん、有磨さんはビールで、乾杯をした。


「いやあ、海影のお陰で新潟でこんな可愛い子と飲めるなんてねー」


今私の隣に座るミチはやけに饒舌で、猫のようなすまし顔でステージに立っていたミチとのキャラクターにギャップを感じる。


「優香が『ライブは友達と行きます』なんて言うから、てっきり玲奈(れいな)のことかと思ったよ」


有磨さんの本名は、“優香”と言うらしい。初めて知った。
レナさんが“玲奈”。