海までの距離

両手で隠しきれない有磨さんのその耳が、真っ赤で。






私がジンジャーエールを1杯、有磨さんがカシスオレンジを1杯飲み干したところで、がやがやと男の人複数の声が近づいてきた。


「お、いたいた!」


真っ先に戸口からひょこっと見えたのはは、ほんの1時間くらい前にステージでギターを弾いていた緒方ライの顔。
ステージに立っていた時や雑誌で見た時と違って化粧はしていないし、黒い無地のタンクトップにクラッシュデニムというラフな格好だけど、それでも正真正銘、ライの顔。
自分の背筋がぴしっと伸びるのを感じた。


「海影君、女の子いたよー!」


後方を振り返ったライが大声を出すと、


「わー、初めましてー。お店の確保有難うね」

「海影、ほら遅ぇよ」


立て続けに、やはり私服にノーメイクのミチと凪の登場。
そして…。


「ユウカ、久しぶり」


恐らくスタッフであろう女の子1人とローディの男性2人を連れて、海影がそこに居た。