海までの距離

お父さんは仕事、裕は学校。
2人まで見送りに来ていたら、きっと3人がぞろぞろとホームまでついてきてしまったに違いない。


「送ってくれて有難う、お母さん」

「…気をつけて、ね」


手を振るお母さんに背を向け、私はキャリーを引いて歩き出す。
今目の前にある新潟駅も、これで見納め。
次にここに帰って来られるのは、夏休みかな?分からない。
お母さんに見送って貰う時に、海岸沿いを通って貰った。
晴れやかなる青。綺麗すぎるくらいに綺麗な青。
佐渡島も、くっきりと見えた。
海影さんは、海、見たかなあ…。
ぼんやりとそんなことを思いながら、前もって買っていた東京への切符を財布から取り出し、改札を抜ける。
片道切符。そう考えると、しんみりしたものが込み上げてきた。
そんな感傷に浸るのもどうかと思い、改札の中の売店へ足を向けた。
欲しいものがあるわけじゃないけど、ペットボトルのお茶を掴んで、レジへ。


「なあ、俺のはー?」


背後から聞こえたその声に、びくっと肩が震えた。