海までの距離

本当は、そんなに海影さんに頼るのも良くないよね…。
少しずつ、海影さんからも自立していこう。
3月の中旬になってから親子揃って上京、お母さんはそう考えていたみたいだけど、私は「東京で咲と一緒に買い物する約束をしているから、先に一人で東京に行きたい」と真っ赤な嘘をついた。
正直なところ、許して貰える自信はあまりなかったけど、押し切る自信はあった。
そんな自信も無駄になるくらい、両親共あっさりオーケーを出してくれた。
今までの門限やら外泊禁止やらの反動なのかな…なんて考えてしまう。
結局、お母さんは私が旅立つ3日後に上京してくれることに。


「それじゃ、行ってくるね」


大きなキャリーケースを掴んで、私は車から降りた。


「ホームまで見送るのに…」


運転席で、お母さんが眉尻を下げて苦笑を零す。
そのどこか寂しそうな表情に、胸が苦しくなった。


「いいよ、面倒かけちゃう。それにお母さん、すぐに東京来てくれるでしょ」

「そうだけど…」


歯切れの悪いお母さんの顔に、今日が平日で良かったと心底思う。