海までの距離




「咲だって。咲が頑張ったから、彼氏と同じ大学行けるんじゃん。十分ドラマだよ」


私の気持ちを隠すように、話題を咲に変える。


「あいつ、無駄に頭が良いんだもん。あいつに合わせるの、すーっごいきつかったよぉ」


照れ笑いする咲。
今でこそこうして笑えるけれど、咲にとっては本当に辛かったはず。
それだけ辛くても、彼氏と同じ大学に行きたいという気持ちの方が上だったんだ。
愛の力って、凄い。


「大学行っても、東京行っても、1ヶ月に1度くらいは遊ぼうね」

「勿論!私、原宿のクレープ食べてみたいなー」

「真耶ちゃんはクレープ大好きだね」

「咲も大好きでしょ」

内容の薄っぺらい、馬鹿みたいな会話でもおかしくておかしくて、私達はいつまでも笑っていた。












東京での生活の準備を、お母さんが手伝ってくれることになっている。
「今の真耶一人じゃ、野菜すら買えないでしょ」なんて言われ、海影さんがいることをうっかり言いそうになってしまった。