海までの距離

遠くで、聞き慣れたチャイムが聞こえる。















クラスの皆とは18時に駅前のサイゼリヤに集合ということになった。
帰宅部の咲と私は、それまでの間に部活の仲間とじゃれ合うなんてことも当然なく、いつものクレープ屋で先に2人だけの打ち上げ。


「真耶ちゃんは、明日からもう東京かぁ…」


クレープ屋のおじさんの粋な計らいで、苺をいつもより多めに入れて貰ったからか、咲の顔はすっかり明るみを取り戻していた。
化粧も直して、私が見慣れた咲に元通り。


「…先に行ってるね」


私のいつものバナナのクレープも、私も今日は生クリームを倍量入れてくれた。
嬉しい反面、いつもと違う食べ物みたい。
味はいつものそれと何ら変わらない。


「あのバンドマンと一緒に行く約束なんでしょ?」

「うん」

「いいなぁ、そういうのってドラマチックで」


ドラマチック――咲にそう言われて、頬が熱くなった。
そんなにいいものなのかな…。
浮かれていいのか、私にはまだその判別がつかない。