海までの距離

こんなの、意気消沈する理由にはならない。
それに、私のやるべきことはステージ上で見せてくれた「可愛くやんちゃな春」を活字で描くこと。












式の最中から既に真っ赤な目をしていた咲が、体育館から1歩外に出た途端、崩れるように泣き出した。
卒業証書を抱きしめてわあわあと泣く咲を、抱きしめてあげる。


「咲、マスカラがぐちゃぐちゃだよ…」


私の肩に顔を埋める咲。
可愛い顔を台なしにして、咲はそれでも泣き続ける。
咲の涙が滲む、肩の辺りが温かい。


「真耶ちゃんだって、泣いて、る、じゃん…」


指摘されて気付いた時にはもう遅く、つうっと頬を伝う感覚に、はっとした。


「やっ、だ、咲が泣くから!」

「だっ、てぇえ……うわぁーん…」


渡り廊下で抱き合って泣き合う私達に、続けざまに泣き出す子や「泣くなよー」なんて苦笑いする子。
皆、大好きな友達。
もう全員が集まることなんて、そうそうない。
そう考えたら、悲しくならずにいられようか。
つけまつげがとれる感覚がしたけど、そんなことお構いなしに私達は泣き続けた。