海までの距離

多少心苦しさもあるけれど、ここは有磨さんの思いやりを有り難く頂戴しようと決めた。
あれから有磨さんには、定期的に海影さんとのことを話している。
私の心中も一緒に。
全て汲んでくれる有磨さんに、心から感謝した。
本名を知らなかった仲でも、深く付き合えるものなんだ。
有磨さんと目が合うと、有磨さんは意味ありげに、にこっと笑いかけてくれた。


「今日はライブ終わったら、全員でご飯行こうね!」


要さんが提案した。















あれだけ胸をときめかせていたJIGSAWの春。
自分はライターであると自身に言い聞かせてみたら、思いの外あっさり線引きができた。
きゃあきゃあ言っていた自分にさようなら。
ライブが終わって、萩原さんが勧めてくれたように楽屋に挨拶に行く。
(馴染みのあるライブハウスの、全く知らない裏側に向かう瞬間は、いやにそわそわした)
なるべく堂々と、楽屋に入る。