「…あ、それでハーメルンが新潟に来るんですか?」
私は雑誌から顔を上げ、本元の質問を投げかけていた有磨さんの方を向いた。
「うん、来週の金曜日。ここでライブやるんだけどさ、良かったら真耶ちゃん一緒に行かないかなぁと思って」
有磨さんの誘いに、悩む理由はなかった。
定期テストはもう終わって不都合なことはないし、何より、こんな美人がこの新潟で育ったのかということに、勝手に誇りを抱き始めている自分がいる。
一体、どんなベーシストなんだろう。
海影、観てみたい―。
「行きたい!行ってみたいです!」
有磨さんに飛びつかんばかりの勢いで、私は返事をした。
そんな私の様子に、有磨さんが「よしよし、一緒に行こうね」なんて小さい子のように私をあやす。
「ハーメルンの他にも、関東のバンドが幾つか出るよ。楽しいよきっと」
「…あれ?でも、レナさんは行かないんですか?」
レナさんと有磨さんは二人でひとつ、そう私は思っていた。
何をするにもどこへ行くにも、二人はいつも一緒にいる気がする。
「レナはその日都合が悪いんだって。白乃ちゃんと要ちゃんと京ちゃんは、Lilyのライブを観に東京行っちゃうし。暁葉ちゃんは会社の送別会」


