海までの距離

有磨さんは、何か大きな勘違いをしている。
私はそんな風に見えるんだろうか。
残された私の頬が熱を帯びていったのは、言わずもがな。
すぐには会場に戻れず、冷たい床にしゃがみ込んで頭を抱えた。















バスを待っていると、雪がひらりと目の前を舞い降りていった。
一昨日の朝方も少しだけ降ったが、結局それも積もらず。
きっとこの雪も、積もらない。
根拠はないけど、漠然とそう思う。
もしも明日の朝起きて雪が積もっていたら、海影さんにメールしようかな。画像付きで。
めっきり海影さんとメールしなくなってしまったから、たまにはいいよね。
メールのフォルダは、受信箱も送信箱も少しだけ寂しい。
その代わり、電話の履歴は海影さんの名前でいっぱいだ。
そんな思いに耽っていたら、ほら、海影さんから電話だ。
海影さん、テレパシー機能付きかも。


『おう、遊び歩いてるのかー?』


もうすっかり「もしもし」なんて言わないし言われなくなってしまった私達の通話。