海までの距離

夏の夜に似つかわしくない、COLDPLAYの音楽と煙草の匂い。
ネオンが差し込む車内。
4ヶ月前が恋しい。


『もし推薦で無事に大学決まったら、年末の東京公演遊びに来いよ』

「東京に!?」


海影さんの突発的なお誘いに、私はびっくり。


『ファイナル。ちょっと大きいライブハウスなんだ。しかもワンマン』


声が明るい。
いつもどっしり構えた海影さんには、馴染みのない声色。
いつもずっと先を見つめてプランニングしてきたであろう海影さんにとっても、今のハーメルンの状況は単純に嬉しいものなんだろう。


『プレッシャーかけるわけじゃないんだけどね、先の楽しみにがあった方がいいだろ』

「そうかも…」

『それに、真耶に見て欲しいんだよ。俺…俺達が、東京でどんな形で、どんな姿で生きているのか』


電話越しなのに、今の海影さんの表情が鮮明に想像できる。
海影さんは強い。強くて逞しい。
男の人と女の子の差があるのかもしれないけれど、私は、海影さんみたいになりたいと思う。