海までの距離



『俺達、地方にいるな…。長野だっけか』

「いえ、仙台ですね」


ハーメルンのスケジュールをきっちり把握してる私、気持ち悪いなあ。


『そう…じゃ、会えねぇんだ』

「残念です…」

『うん、ま、しっかりやって来いよ!応援してるからさ』

「有難うございます!」


学校の玄関だということをすっかり忘れ、つい大声を出してしまった。
あわや先生方にご叱責される寸前。


『そろそろ準備するわ。また連絡するから』

「はい。海影さん、ライブ楽しんで」

『おうよ』


少し惜しみながら、私は電話を切る。
次に東京に行く時には、海影さんはいない。
それでも、一人でもやってやる。
一人で東京で戦ってやるんだ。










面接は2日後。
ハーメルンは本日、宇都宮にてライブ。
壁に掛かっている時計にふと目をやると、ああそろそろ海影さんがライブハウスを出る頃かな、という時間。