「預けてくれたって、どういうこと?」
「この間東京に行った時に、海影さんが『大学受かるまで持ってろ』って。だから、預かり物なのよ」
話を大分省略した。
東京から帰ってきてすぐ、ライさんに大学案内して貰ったことと海影さんと水族館に行ったことは咲に報告してある。
でも、それ以上――どういう話をしたとか、どういうことを思ったとか、それは話していない。
海影さんと私は彼氏彼女じゃない。
だから、あまりあれこれ話すのは気が引けた。
咲にも勘違いさせてしまうし、それ以上に、自分が自分を勘違いさせてしまいそうで。
「ふうん…成る程、お守りね」
お守り。
そう、私にとってこれは紛れもなくお守りだった。
神社で買ったお守りよりも、ずっとご利益のあるお守り。
「そのバンドマンは、真耶ちゃんのこと、好きなのかなあ」
「分かんないよ、そんなの」
クレープを口に運ぶ。
ここのクレープ、こんなに甘かったっけ?
ここのところ、海影さんは忙しいみたいだ。
メールの返信がとても遅い。


