ゆっくりとガラス張りのドアを開くと


「あら起きたの?」

母のご機嫌な声と

「お邪魔してます。」

聞き慣れない男の声が耳に入った。


入口で一瞬立ち尽くす。


ソファーに視線を向けると、アタシに微笑みかける那智がいた。


「・・・・・・」


黙ったまま、那智の横に腰を下ろすと、母はキッチンへと席を立った。


斜め前に座った紳士がアタシに笑いかける。


「始めまして。新地と言います。」


「・・・始めまして」

視線を泳がしながら、アタシは軽く頭を下げた。


「再婚の件、賛成してくれてありがとう。」


「・・・・・・」

本当に嬉しそうにアタシを見るその人は


きっと本当に良い人なんだと思う。


穏やかで、優しそうで、きっと母を幸せにしてくれる気がした。


それでも何も返事が出来ない。


「あ、そろそろ行かないとな?」


「・・・・・」

母が戻って来て、アタシの前に紅茶を置くと、那智が同時に口を開いた。


「あら、もう行くの?」

「はい、待ち合わせがあるので。すいません」

那智はこうゆう時、とても丁寧な口のきき方をする。



那智の言葉で、すんなりと引き下がった母達を尻目に、したくをする為一度部屋に戻った。


化粧をして服を着替える


鏡の中のアタシは正直で、凄い酷い顔してた。


時刻は午後4時少し前


待ち合わせの時間にはたっぷりと時間がある。