「彼氏と喧嘩でもしたの?」

「・・・・・!!」

そんなアタシの様子に気付いたのか、母が半笑いで紅茶を口に運ぶ。


「彼氏はいません・・」

何故か敬語になるアタシに、母は小さく笑った。


「あの子、彼氏だと思ってたけど違うのね。」


「・・・・・・」

なんとなく母が言う人物が想像出来て、何故か顔が赤くなる。


「ふふ、好きなの?那智君?だっけ?」

「・・・・・」

やっぱり・・・

那智の事言ってるんだ



「後悔しない様に、好きなら頑張ってね?」

「・・・・・」


後悔・・・・か・・


「後悔・・してるの?」

アタシは思い切って母を見上げた。

「・・・・・・」

黙ってしまった母を、それでもじっと見つめる。

「いろいろね・・・」

フッと苦笑いしてから、言葉を続ける。


「若かったから、愛美にも苦労かけたね・・・ごめんね。」


「・・・・・」

そんな事
聞きたかったんじゃなくて・・・


「今付き合ってる人・・好きなんじゃないの?」

「・・・・・」


「好きなら・・・別に別れる必要ない。アタシの為とか・・そうゆうのいい。」


「・・・・・・」

アタシの言葉に、母は驚いた様な顔をすると、細く笑って

それから何も、答えてはくれなかった。



それでもアタシは、精一杯、ちゃんと伝えたつもりでいたから。

それだけで満足してたんだ・・・・


ごめんね?