[完] スマフォン忍者 HISANO

 ここで、王路の目線に立ってみる。

 王路の目には今寿乃がいる場所に、寿乃の姿が見えない。見えないどころか、いることを知らない。
 寿乃がいる周辺に、別に違和感を感じない。
 ちゃんと、トイレの壁が見えて、床が見えて。

 むしろ、子分は何を言いたいのか分からないって顔をしている。

 
 王路は再び子分たちの方に振り向いた。


――はあ…。
   って、まだまだ油断できないじゃん。――

 とりあえず、王路の恐ろしい目線から解放された。
 だが、問題はこの後だ。この後、王路が何を言い、行動するかだ。


「別に何もないけど。

 とにかく、再開だ。」

 人を黙らせるような怖い声。

 でも、どんなに怖い声でもこの言葉だけは、寿乃はほっとした。


 だけど、まだまだほっとできない。

 このまま動かないでじっとする。

 王路たちがここにいる間、何かにぶつかったり、また動いたりしたらまた大変。

 寿乃は背筋をしっかり伸ばし、上体がぶれずに、まっすぐ立っている。