[完] スマフォン忍者 HISANO

 さて、話を元に戻すとしよう。
 
 寿乃が、きちんと周りの景色と同化していることを確認した。


 その時、

「ほんとうざい、富川うざい。」

 言われた本人の心に、深く、強く、酷く突き刺さる。

 王路の声が、寿乃の耳にも聞こえた。


 
――もう、入ってくるのかな?――

 一気に緊張が体中をめぐる。

 寿乃の存在がばれないか、心配でたまらない。
 もし、ばれたら、ただじゃあ済まないだろう。

 王路たちのいじめの標的にされる?
 王路たちに殴られる?

 考えるだけでも恐ろしい。

 それでも、王路たちの悪から、クラスを守ると決めたんだ。
 そのために今は、固唾を呑んで事の成り行きを見守るしかない。


 
 入って来るかと思ったら、王路たちは、たらたらたらたら。

 うざいっと思うぐらい歩くのが遅い。

 まだ入らない。

 寿乃は慌てて損したって顔している。

 そう思っても仕方ないね。