[完] スマフォン忍者 HISANO

「トイレに連れて行って。」

 王路の野太く鋭い声。
 それを合図に、風花を含めた子分三人がくららを取り押さえる。

「放して、話して、何もやってないよ!!」

 くららの必死の抵抗もむなしく、王路たちはトイレの方向に向かった。


――高橋、もう、許さないぞ!
   お前の好き勝手にはさせないぞ!――

 もうこのまま放っておけない。

 寿乃は貴重品とスマートフォンだけを持って、自習室を出る。

 とにかく走る。
 走る、走る、走る。

 ちなみに自習室は、“離れ”と呼ばれている校舎の三階。寿乃ら一年生の教室は、“本棟”と呼ばれている校舎の三階。
 離れと本棟は、渡り廊下で一つの校舎のように繋がっている。

 だから、そう遠くはない。

 だけど走る。

 早くしないと王路たちが来る。

 かといって、寿乃は慌て過ぎない。
 慌て過ぎたら、落ち着いて、冷静に行動や判断ができないから。