「‥子猫さん、迷子ですか?」

いきなり声がして、
その方向を見ると‥

「琉生兄ぃ‥?」

「ゆぅ、お前迷子の黒猫みたい‥
すっげぇ満月似合ってるし、
そのままだと、闇に消えそう。」

ハハと笑いながら、隣に座った。

「でも、こんな夜に‥何かあったか?」

「琉生兄ぃこそ‥何やってんの?」

「俺‥は、コンビニ帰り。」

「そっか‥
あたしね‥疾風先輩と別れちゃった‥」

「え?!」

「だって、茉莉さんには先輩が
必要だな〜って思ってさ。」

涙が出ない様に、明るく言った。

「‥いつもだよな?」

「え‥?」

「ゆぅは‥いつもそうだよ。
小さい頃から自分の欲しいもの
でも、人に譲ってあげたりして‥
絶対、我慢するんだよな?」

「そんなこと‥」
無いと言おうとしたけど、遮られた。

「泣くのも我慢してるじゃん。
お父さんの葬式の時も泣かなかっただろ‥?」

そう‥あたしには、お父さんがいない。
小3の時に、交通事故で亡くした。

「だって‥お母さんも泣いて
なかったから‥我慢しなきゃと思って。」

小3ながらにそう思った。