「待っててね、ローズマリー」

あたしはそっと呟いた。


母には置き手紙を残してある。

よく効く目の薬があると聞いたので探しに行く事、

ローズマリーにはエリザお姉ちゃんの所に行くと言ってほしい事、

そして、

ホークに『ごめんなさい』と伝えてほしい事


エーンバルはあたしを乗せて村を通り抜け、畑の間の道を通り、森へと向かった。


「エーンバル、もう走ってもいいわ。マール修道院へ、お願い」


夜の森では、どこに障害物があるか分からない。

あたしは鞍の取っ手に掴まって、目一杯身を低くした。

エーンバルは風を切って走り出した。

土を蹴る蹄の音と水飛沫の音は聞こえたけれど、体に感じる揺れはほとんど無い。

やがて森を抜け、広い道に出ると、あたしは背中を伸ばして座り直した。


夜はまだ長い。


昼間にもう少し眠っておけばよかった。

次第にあたしの頭が、コクンコクンと落ち出した。