「奈央のお母さんってさ、どんな人?」
どんな人...?
「...すごい優しかった...あたしと弟を守ってくれて...」
「そうか」
「...お父さんが生きてた頃は...」
「え?」
「お父さんが死んじゃった後はもう...前の面影は全部消えて...いつも近所の目ばかり気にしてた...」
「よしよし」
優しくあたしの頭を撫でてくれる淳。
「俺な、親に虐待されてたんだ」
「え...?」
淳の顔を見る。
淳は笑って見せた。
「俺が小学1年の時かな?親父とお袋が酒に酔ってさ。殴られるは蹴られるは。でも俺、まだ餓鬼じゃん?泣き叫ぶしか出来なかった。それを不審に思った近所の人が通報してくれて。俺は警察に保護された。俺さ、親戚居なかったんだよね」
ははっと笑う淳
「そん時に凪斗が助けてくれた。『そいつは俺の弟です』って言ってくれて。それからあの施設に入ったよ。周りの目はすっげぇ冷たかったけど。凪斗だけは親身になってくれて。あそこに居る奴は全員そういうツラい思いをしてきた奴等。だからこそ、気持ちを分け合えるんだ」
淳はしっかりした目で、あたしを見つめた
「うん...」
「だから、大丈夫。戻ろう?」
「....」
そこは黙り、俯く
帰ったら...お母さんが居る...
「俺らが居るから。何かあってもお前を俺らは全力で守る。だから心配するな」

