龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】

「圭吾さんがいなかったら誰が魔女をやっつけてくれるの?」


わたしは前を向いたまま言った。

サッカーの後半戦が始まっている。


「雷が鳴ったら誰が抱きしめてくれるって言うの?」


わたしは圭吾さんの肩に頭を寄せた。


「待ってて。きっとちゃんと圭吾さんの本物の恋人になってみせる」


「楽しみにしてるよ」


サッカーの試合は続いている。

航太がボールを勢いよく蹴った。


「あっ!」


「おっ!」


嘘みたい


航太が蹴ったボールがゴールに吸い込まれるようにネットを揺らした。


「入った?」


「入った」


ワッと歓声が起こる。

なっちゃんが跳ねてる。

みんなが航太の名前を呼んでる。


ここはここで幸せだったけど――


「圭吾さん」

わたしは圭吾さんの耳元に口を寄せた。

「明日、帰りましょう。わたし達の家に。わたし達の裏庭に」


「そうだね」


「そしてわたしのためにピザのお店を作って」


わたしがどこにも行かなくていいように


「了解」


圭吾さんは微笑んで、わたしを抱きしめた。