「……理桜!待て、理桜っ!」 小さい背中との距離は、どんだけ頑張っても縮まらない。 俺は小さく歯噛みする。 なんでこの手は届かないんだ。 お互いに息は切れている。 でも、体力的な面では、奏の方に歩があった。 学校のはしっこ、 人気のないような校庭の隅で、 ようやく彼女の手首を捕まえる。 小さく震えるそれは、ひどく儚いものだった。