「はいっ…誰ですか?」



私は急いで涙を拭く。



「私だよ、ちょっといいかな。君の部屋に入れて欲しいんだ」




「理事長……」




ふと、最初に理事長と出会った時を思い出す。



あの時も…私はこんな風に部屋でひとりぼっちだった。



「はい…どうぞ」



でもあの時とは違う。



お父さんがいなくなって…信じる人がいなかったあの頃とは…



今では、安仁屋理事長は本当のお父さんのように信頼している。




「ありがとう。入るよ」



部屋に入った理事長は、すごく驚いたような顔をしていたけど…




一瞬で、悟ったようだった。




「出て行くつもりかい?」



その話し方は…とても穏やかだった。






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