約束【短編】

そーっとそーっと、音を立てないよう
に枕元まで歩いていくと、

こちらに背を向けて眠っている
彼が見えた


『・・・実羽』
『!・・あ、起きてらしたんですか?』
『まぁね』
『びっくりしました・・・
 どうなさったんですか?
 もう1時ですよ?』
『いや・・・、別にどおって事もないけどさ』
『?』
『・・抱き枕がないと寝苦しくてね。』
『だ、抱き枕って・・・』
『ほら、早く入りなよ。』
『え、あ・・・はい』
『・・・・・・・ああ、やっぱり
 君は抱き枕にちょうどいいや』
『(・・喜んでいいんでしょうか)』

そっと布団に入って、
出来るだけ隅に寄って拓哉に背を向ける

ズキンズキン、と悲鳴を上げる胸を
寝間着の上から押さえつけて、
涙に蓋をする様に無理やり目を閉じた