ガサガサ、茂みを掻き分ける 乱れた息を整えるのも忘れて 僕は桜井神社の横手にある 森の中を記憶を頼りに歩いていた まだ幼かった実羽に手を引かれて あちこち歩き回った、10年前 確かにこの辺りだったはずだけど 暗さに慣れた目で辺りを見渡すと、 同じような景色の中に微かに見えた そして、今僕が立っている場所は 『あ、もうすぐそこですよ』 丁度実羽にそう言われたところだ あの時、確かに実羽はあっちを 指さしていた