約束【短編】


・・・やっぱり、拓哉は憶えて
いないんだ

『約束ですよ?』
『まぁ、僕がその時まで
 憶えてたらね。』


忘れてしまったのか

・・・約束、したのに

私は拓哉に見えないように
テーブルの下で手を握り締めた

その日の夜、夕飯も終えた私は
自分の部屋で着替えていた

・・・やっぱり着物でない服は
落ち着かないけれど、今夜位は
と、鏡台の前に座る

軽く化粧をしてから時計を見ると、
午後の8時位だった

・・・拓哉、もうお風呂から
上がっただろうか

小さく息をついてからバックを持ち
上げると、中から小さい振動が伝わ
ってきた