【完】ラブ☆パワー全開




「部屋! 入ってて」

「は? 綾さん、どっか行くん?」

「えっと……10分、いや5分でいいから!」



髪を梳かして。

前髪をおろして。

もう少しマシな服に着替えて。



眉毛くらいはかきたいっ!



額に手を当て、
仁に背中を向けて駆け込もうとした洗面所。

それなのに、
それを仁は許してくれなかった。



「あぁ、なるほど」



そう言いながら、
あたしを部屋の奥へと引っ張って行く。



いや。

ちょっ、待って、仁。

わかったなら尚更、洗面所へ行かしてーー!



そのままベッドに腰掛け、
あたしは向き合う形で座らさせられる。

勿論、前には仁の顔がドアップで。



「いや、ちょっとこれは……」



洗面所へと向いた体勢、泳ぐ目、言動、全てが挙動不審。

それを見てクスクスと笑い、



「そのままで、えぇよ」

「え!?」



ってバレてた!?

そのままでいいって、よくないし!

額に掌を当てたまま目だけを動かすと、
優しく笑った仁が少し哀しげな表情へと変わった。