「……。さて! まわろか」



唇が離れ、
あたしを見下ろした仁がそっぽ向いて言った。


だけどね?


それは仁が
照れてるからだって知ってるよ。

さっきの女の子よりも強く。

もっともっと近付いて、
あたしは仁の腕に手を絡めた。



「えへへ♪」



そう笑って見上げると、
仁の大きな掌があたしの頭の上に降って来る。



あったかい、優しい時間。



「仁のクラスは何するの?」

「俺のクラスは、ライブ劇やってー。俺は照明やから出ーへんけどな」

「そーなんだ」



ちぇっ。

ちょっと残念。見たかったなぁ。


絶対かっこいいのは、間違いないもんっ!

ライブって事は、歌もありでしょ?

仁の歌……聴いてみたい!


低くていい声だもん。

絶対上手いよねぇ。


歌って欲しいなぁー。


あー……でも、これ以上モテても困るしなぁ。

う~~~ん、難しい選択だよねぇ。



「はい、綾さん。独りの世界終了」

「え!? うぅ……また、ごめんなさい」

「だーかーらっ! 気にしてへんて。無理矢理、引き戻すし」



あたしの顔を覗き込み笑う仁に、
またキューっと心臓が締め付けられた。

絡めた指に少し力を入れ軽く引っ張られる。



さっきまで見ているだけだった文化祭の出し物を仁と回る。


制服姿の仁が新鮮で。

そこに一緒に居れるあたしは、
いつもよりドキドキしてて。


まるで、あたしも同じ高校生になれた気がしたんだ。