「やっぱ冬のバイクは、寒みー」

「だねー」



家の前に着いた時、
もうすぐ春とはいうけれど3月の風はまだまだ冷たくて体の心まで冷やす。

あたしがバイクから降りると、
仁は携帯と取り出し時間を確認した。



「さて、帰るわー」

「あ……」

「ん? どしたん?」

「あ……うん」



もう少し一緒に居たい。

なんて言っていいのかな?


でも……。


今日はせっかくのホワイトデーで。

仁との初めてもあったわけで。

それなのに、帰っちゃうとか凄く寂しいんだけど、な。



後ちょっとだけ、本当に少しだけでいいから。



「家あがってかない? お茶でも……」



ハッキリ言うことは出来なかったけど。

これで伝わる、よね?



「あー……うん。でも帰るわ」



チラッとあたしを見て、優しく断る。

やっぱり……駄目か。



「あ、そか。うん。気をつけてね?」

「……ん、じゃ」



バイクに乗ったままの仁が、
あたしの頬に軽くキス。


不意打ちのキスに、
冷めていた体が頬から一気に熱くなった。



「また、メールするな」



って仁の悪戯な笑顔。



駄目だ……。
やられた。