わたしは自分の唇を指でなぞると、その感触を確かめた。




唇は人間の身体の中でも、最も敏感な部分である。

その微妙な動きで言葉を発し、食べ物を選り分け、身体の内と外を繋ぐ。

その表面に汗腺はなく、薄い表皮の下には毛細血管が張り巡らされている。


口づけとは……


その敏感な部分を重ね合わせる行為。

それは、身体を重ねるより、もっと神聖な高揚。

言葉の溝を埋め、心の熱を伝え、相手を翻弄させる。


内から湧き上がる吐息を飲み込み、熱い舌を絡ませれば、それはもう魂の交換をしたとも言える強い絆が生まれる?


――ないない……


ありえない


そんなオーラは出ていませんでしたよ。