「キリコ……」




気を抜いたその一瞬。

そう名を呼ばれて口づけられた。

その口づけは何処か切なく苦しそうで、わたしは必死にそれを受け止めるしかなかった。



――わたしに彼を癒せる?

まさか!!



そう頭では理解できるのに、身体が言うことを聞かない。

わたしは滑り込む熱い吐息を必死に受け止めていた。



あぁ、わたしは何を頭で理解しようとしてたのだろう?



『人間、本当に悲しい時は人肌が恋しくなるものさ……』



父が死んだ時、祖母はそう言ってわたしを一晩中抱きしめてくれた。

その言葉の意味が、その時はわからなかった。



悲しみに理由なんて必要ない。

心の叫びを素直に受け止めればいい。

人肌に恋焦がれて、求めればいい。



二度目のキスは、ほんのり涙の味がした。