「だって今日は、お前の婆ちゃんの月命日だろ?

ここに来れば、お前に会えるかなって……

俺ってエスパー?」


「月命日なんて、良く知ってるね」


こんな古臭いしきたりを、こいつが知っていることに驚いた。


「俺だって親死んだし、いろいろ周りから言われるしさ。

正直、だから何だってんだ、って気持ちあるけど。

母さんの好きだった花、供えてきた。

まだ墓には入ってねぇけどよ。

由紀が退院するまではなぁ」


そう呟いた顔は、悲しそうにも苦しそうにも見えなくて。


まるで人事のように自分の不幸を語る、やつの真意を探ろうと、わたしの気持ちは知らず知らずのうちに、やつに歩み寄っていたのかもしれない。