『心で理解することも、大切さね』




何処からか、声が聞こえてきたような気がした。

わたしは驚いて耳を澄ます。

生い茂る木々の葉を、風が揺らしていた。

その声は、空耳かもしれなかった。


「わたしってば、何でも理屈で理解しようとするからなぁ~

それで上手くいくことの方が多いんだけど。

心かぁ~」


それでも、祖母と対話が成立したようでちょっと嬉しい。

わたしは我を忘れて、一人、呟いていた。


「お前、誰と話してんだ?」


突然かけられた声に、わたしは驚いて、しゃがんだまま後ろに尻餅をついた。


「いったぁ……」

「ばっかだなぁ……お前、やっぱ鈍い? ほら……」


そう言って差し出された手の先には、山之辺正哉、あいつがいたんだ。