学校でも、山之辺とわたしの仲をとやかく言うやつらは居なくなった。



「霧子と山之辺ってさ、なんかもう夫婦って感じだよね」

咲までもがそんなことを言って、大きく頷いた。

「キスしかしてないのに、夫婦ってありえねぇ~」

山之辺の雄叫びをよそに、わたしは聞こえない振りを決め込んで机に向かう。


「まじで?」

「まじまじ」

「押してみたの?」

「いやぁ~、まじ怖くて」

「だよね、でも、案外あっさりオッケーかもよ」

「まさか」

「ダメモトで押してみる価値はあるって!」


咲と山之辺のやり取りは、あらぬ方向へ。

――って、咲、なに煽ってんのよっ!

手は動かしながらも、意識は二人の会話に集中している自分が怖い。