「ご免、霧子。面倒に巻き込んじまって」

上から声が降ってきた。


わたしはやつの胸に顔を埋め、身体を震わせた。

――だって……


「何笑ってんだよ?!」

「だって、面白かった」

「面白がるなよ」

「彼女達、また来るかなぁ」

「もう来ねぇよ! ってか、来させねぇよっ!!」

「来たらまた、こん風にキスされちゃうのかなぁ」


「霧子っ?!」


見上げた山之辺の顔は、戸惑いに揺れていた。

わたしだって自分でも驚いていた。

こんな自分の一面に。


「わたしも山之辺に他に好きな人が出来たりしたら、あんな風に相手に詰め寄ったりするのかなぁ」

「そりゃねぇだろ」

「そういう感情も経験してみたい」

「霧子には無理だな」

「何で?」

「だって、俺には霧子しか見えねぇもん。

霧子一筋っ!」


山之辺の抱きしめる腕に力が篭った。


「つまんない」

「それ、喜ぶとこだろ?!」

「そうかなぁ」


こんな経験ができるなら、面倒に巻き込まれるのも悪くない。