山之辺の直情的な行動が、わたしの理性に火をつけた。



「それは問題の本質を外してるでしょっ!」


わたしは立ち止まり、やつの腕を振り払った。


――そこはそれ、人間は理性の生き物だ、と返すべきところじゃない!


ところが、わたしの理性は山之辺の直情的な行動を理解しきれていなかったらしい。


「本質って何だ?

俺が霧子を求める気持ちは本能じゃないぞ。

おまけに、霧子を大切にしたい気持ちは理性でもない。

本質は、愛だ!

覚えとけ」


山之辺はわたしをキッと睨むと、わたしの手を引いて歩き出した。


「山之辺、離してっ!」

「離すかよ」


――こいつ絶対、わたし達の話を聞いてたな……


勢い歩くわたし達に驚いて、登校中の生徒達が次々と振り返る。

朝っぱらから目立つことこの上ない。


でも……

――ごめんね、山之辺。


一見突飛に見える行動の裏には、わかり難い感情があるんだってこと。

山之辺の場合、それは常にわたしに対する愛、ってことなのかな……


繋いだ手の温もりに、やつの愛を感じて、わたしは心の中で謝った。