あいつは、わたしよりずっと孤独に向き合う術を身に着けている。

悔しいけど。

いきなりキス、には驚いたけど、わたしに感情のはけ口を作ってくれたのだと思えなくもない。

母を亡くし、病気の妹を抱えてあの余裕。

わたしは足元にも及ばない。


「好きだよ、霧子……」


あいつの発した言葉を、どうとらえていいものか悩んだ。

わたしに好きの価値があるのか。

そもそも孤独に愛が必要なのか?


『だから、霧ちゃんも、素敵な恋するんだよ』


一人立つ、孤独と恋する心は相反さない。

祖母はそんな話をわたしに伝えたかったのかな。

祖父に先立たれた祖母は、それでも祖父との甘い思い出を大切に持ち続けていた。


――これって恋、なのかな?


ドキドキと高鳴る胸を押さえながら考える。

わたしは山之辺正哉が好きなのか、否か。


『人間、本当に悲しい時は人肌が恋しくなるものさ……』


わたしはただ単に、一肌が恋しいだけなんじゃないだろうか?

誰かに抱きしめて欲しいだけなんじゃないだろうか?

まだまだ未熟者のわたしには、その答えは容易に手に入らない。


……エレベーターの扉が開いた。