母は父の影に寄り添いながら、

「長生きはするものね。若いまんまの和彦さんに会えるなんて、得した気分だわ」

なんておどけた見せた。

「キリコは長生きしてね」

二人はそう言い置いて大きな光の中へ戻っていこうとした。
今生の別れにしては、あまりにあっけない。

「えっ、二人とも行っちゃうの?」

母を連れて行かれたら、わたしは本当に一人ぼっちになってしまう。
そんなの絶対嫌だ。

「待ってよ! お父さん、お母さんを連れて行かないでよ!」

「大丈夫、キリコはしっかり者だもの……」

「そ、そういう問題じゃないよ……」

「素敵な彼氏もできたことだし……」

「そ、それとこれとは次元が違う話でしょ……」

「キリコ、幸せになって……」


「ま、待って! お母さんてばっ!」


わたしは声の限り叫んでいた。