わたしの思った通り、病室の外の廊下で、あいつはベンチに座って待っていた。




「由紀が楽しそうだったから、邪魔しちゃ悪いなって……」


そう言って、あいつは照れ笑いした。

妹思いの兄の役なんて、自分には似合わないって思ってるみたいに。


「わたし、また来るから」

「えっ?」

「由紀ちゃんと約束したから、また来るって」

「そっか、悪いな」


嬉しそうに笑ったあいつの顔が、なんだか無性に可愛く見えたのは何故かな?


あいつがそっと差し出した手を、自然と握っていた。


「行くか……」


そう言われて歩き出す。

行き先なんて分からないけど、こいつと一緒なら何処でもいいかな、なんて、わたしらしくもない。



山之辺正哉という奴を、もっと知りたいって思ったんだ。