山野家の墓には、祖父が一人眠っている。 祖父はかの太平洋戦争で戦死した。 まだわずか二十歳だったそうだ。 その時祖母には、まだ乳飲み子だったわたしの父と、お腹には叔母が宿っていたそうだ。 わずか十八、あどけなささえ残る少女のような祖母と父を抱いた祖父と、出征前に三人で撮った記念写真。 たった一枚残った祖父との思い出を、祖母は死ぬまで肌身離さずもっていた。