俺は、突然の事故で母親が死んで、妹が大怪我をして。

親父と二人でひっそりと執り行った葬儀の後、途方に暮れて上った裏山の墓所で、泣くに泣けない鬱積した苦しみを持て余していた。


だから本当にほっとしたんだ。


霧子に会えた嬉しさと、どうしようもない愛しさと、保護欲みたいなものが込み上げてきて。



抱きしめると同時に、キスしてたって訳だ。



触れた唇は熱く、甘くて。

それは、鎧を纏った彼女の姿からは想像もつかないくらい柔らかかった。


「……

俺のキスには癒しの力があるってさ。

お前超ラッキーじゃね。

ま、ほんとかどうかは俺には分かんねぇけどな」


そんな言葉で誤魔化したけど、癒されたのは俺の方かもしれない。



だから……

あの赤い唇を見る度に、俺はどうしようもなく、その赤に吸い寄せられる。

俺の心の隙間を埋められるのは霧子だけだとわかったから。



だから……

キスは二次的な行動に過ぎない。



その本質は愛だろ?